エクリプスのスタート時にスライトエッジ、ゼクスライドと並んで開発に着手したのがこのスピードハウンドシリーズ。その中でも特に思い入れの深いのがこのSPD93MLLである。
当時、ブランクの素材、テーパーなどあらゆる角度でテストを繰り返し、各地での試験運用を繰り返してきたプロトモデル。基本的な開発背景にはファーストテーパーを基軸としたコンセプトを持っていた。当時、アングラー数の増加によりフィールドはより激戦区と化し、通常のタダ巻きだけでは通用しない状況になった。そんな中で“より掛ける”“より魚をコントロールさせる”といった先鋭的な考えに至ったのは当然かもしれない。
連日のように都市河川、干潟、サーフ、ドブ川とさまざまなシチュエーションで転々と取材、実釣テストを繰り返す中で、そのプロトモデルは次々と進化、派生モデルが誕生していった。
高知の竹グイ地獄に悩まされたときにはショートモデルでパワーのあるティップを持つ“ソウルクラッシュ”と呼ばれるモデルをを駆使して見事、取材中にランカーサイズを引きずり出した。これは別項で語るがSPD810MMLに進化していった。また、小型のプラグをトゥイッチやジャークといったアクション中心で使用するにの適したショートモデルがSPD85MLとなり、沖縄のメッキ戦や浜名湖のキビレ戦などでも活躍した。さらには対アカメや青物などの特殊戦をも想定してケブラー素材を身にまとったあの比類なきハイトルクブランクスのVX93MMLが誕生したのである。
こうして多様な進化をしていくなかで、ある意味、始祖となるべきブランクスがこのSPD93MLL。コンセプト的にはフィネスなファーストモデル。
日中のマイクロバイブレーションゲームを筆頭に、干潟のシャロープラッギングや河川のライトなシンキングペンシルのドリフトメソッドなど、スローな使用にも対応できる汎用性の高さが売りだ。福井の某排水溝で数時間にわたる八字メソッドで良型サイズを引き出したのは当時は笑い話の語り草だったが、いま思えば、この素直なテーパーが疲れを最小限に抑えてくれたからこそできたともいえる所業。
また、近年の河川でのディゲームで使用する小型バイブレーションゲームにも適しており、《小さいものを遠くに投げる》のに適している。ミニスライト75など10〜15gの小型バイブに使われる細軸の小型フックでも瞬時にフッキングを決め、さらにフックに負担をかけない素直なテーパーで魚をいなす。
その反面、ただ柔らかいだけでなく、キワドイところではそのバットパワーをフルに使い一気に寄せることが可能な柔剛一体の使用感のロッドがこのモデルの特徴である。またバチ抜けや稚鮎、エビなどのパターンで使用するドリフトペンシルシャロー75などのライト系シンキングペンシルでのドリフトにも対応しており、スレの進んだ状況でさらに小型のルアーを使えるメリットは強い。