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ヒデはやしの部屋Vol.20 スピードハウンド810MML開発秘話

2012年夏、遂に発売されるエクリプスのスピードハウンドシリーズ。開発秘話第二弾はSPD810MML。

ショートグリップで取り回しはワンランク短い8ft前後のロッドのような感覚のモデルがこの810MML。このMMLという表記でピンとこられた方もいらっしゃると思うが、あのVX93MMLのブチ掛けコンセプトを踏襲したモデルとなのだ。

開発コードは“ソウルクラッシュ(魂砕き)”と呼ばれ、その強気なベリーパワーで渾身の力でフッキングを決めると、その衝撃で魚が脳震盪を起こすくらいのフッキングパワーを有する。VX93MMLでも追求していたのが、バイトに対してのフッキング率をあげるということ。とくにシーバスの口先の硬い筋ばった部分を瞬時にブチ抜き、有無を言わせずに一気に寄せるという早い展開のゲームに最適だ。しかし、このハードなコンセプトは時と場合にはとてつもなく頼りになった。

数年前の高知戦。のちに全国的に有名になったあの竹グイ地獄のポイントでのこと。
スレきったシーバスが相手ということもあり、ミノーをハイパージャークでアピール。リアクションバイトを誘発する作戦がまんまと的中、足元からわずか数mの至近距離でランカーがヒットしたのだ。躊躇するなく一気にフッキングに持ち込んだのだが、なにせ、ランカークラス。一気に走られ、竹杭の密集する危険地帯を駆け抜けていく。ご丁寧にフジツボやカキガラでのこぎりのような状態と化した“死の竹グイ”に2重3重にコスレまくって、誰が見ても絶望的な状況に陥ってしまう。

しかしここで不幸中の幸いだったのがレバーブレーキリールを使用していたことだった。このリールはレバーをフリーにすると瞬時にラインを出せラインをたるませることで、テンションが抜けることで魚の走りを止めることができるのだ。魚は引っ張られれば強く抵抗し、逆に緩ませると大人しくなる・・まさに窮地で見出したギリギリの戦略が結果的に竹グイに擦れている部分の摩擦を少なくし、ラインが擦り切れるのを防いでくれたのだ。

しかし、依然、厳しい状況は続く・・・。2重3重に竹グイに絡んだラインをほどきつつ、ランカーとの熾烈な戦いを続けなければならない。ギリギリのタイミングでレバーブレーキをフルロック、ロッドのパワーと角度をこまめに操作しながら魚の頭の向きをコントロール。1本、また1本と死の竹グイを交わしてしく。

「まるで魚が操られているかのようだった・・・。」
のちにギャラリーの方が語ったかのように、時にやさしく時に強引にロッドのパワーを最大限に引き出しながら巨大魚を誘導していく。スプールに巻き込まれたラインは裂けるチーズのように無残にもささくれ立って、いつ切れてもおかしくない状況。

しかしそれに臆している暇はない。ようやく水面に浮かんだその巨大な影が、仲間が差し出してくれた巨大なネットに吸い込まれると同時に、周囲から歓声があがる。

ようやく手にしたランカーのズシリとした重量感に酔いしれ、仲間から祝福をうける。
次の瞬間、張り詰めていた緊張感がきれたかのように“プっ”という軽い感触とともにラインが切れた・・・。

ギリギリの状況下で真に頼れるロッドSPD810MML。その真価をぜひ体験してください。