REPORT

VX-93MML開発ストーリー

 

エクリプス初のオリジナルモデルとして開発されたVX-93MML
 
当時のコードとして『Unknown[所属不明機]』という名での運用をされていたのは記憶に新しい。シーバスロッドとしての命題『シーバスを取るために突き詰めた性能』だけでなく、それ以上のモンスターと対峙したときでも臆することなく渡り合えるパワーも備えている異色の機種となっている。
 
 VX-93MML
 
 
 
 
〈概念〉コンセプトモデルと汎用モデル
 
今回のVX-93MMLをエクリプスの今後シリーズ展開される機種のなかでの位置付けはコンセプトモデル
 
これは通常モデルが『汎用性の高い最大公約数的』な誰もが扱えるロッドとして開発されているのに対し、あくまで開発途上において『ある性能に著しく秀でた機種』を特化して区別する意味合いで『コンセプトモデル』と呼んでいる。
 
イメージとしてはモーターショーにおけるコンセプトカーのような、採算を度外視して作り上げた『機能美』や高機能性』を思い浮かべていただければ幸いである。本来はレギュラーモデルを開発する際に派生したハイスペックなテストモデルとして存在はするがあまりのコスト高に製品化は難しいという判断が下された。
 
しかし、開発コードUnknown[所属不明機]』の名のもと数年に渡り試験投入。試験運用中にシーバスだけでなく、青物やアカメなどそれ以上のパワーを持つターゲットに遭遇した際にもそのパワーを発揮、十分に渡り合い戦果を残すことに成功している。
 
 
対モンスター戦における極限のファイトのなかでケブラーという素材のオーバースペック的なパワーは非常に有効であると実証されたのである。
 
 
だが、ただ強いだけのロッドでは現在のハイプレッシャーなポイントでは肝心のバイトを引き出せない。アングラーの増加にともない、港湾のみならず、干潟や河川、サーフ等、各メジャーポイントは常に大勢のアングラーで攻めつくされている。昼夜を問わずにルアーを打ち込まれる中、従来の投げて巻くだけのワンパターンなスタイルでは魚に見切られてしまい、バイトどころか反応すら得られないことも多いのだ。
 
いままでの『乗せやすい』『バラシにくい』と呼ばれるモデルとは根本的に一線を画して開発。
『ショートバイトを確実にフッキング』するためのファーストテーパーなブランクはバイトからフッキング動作にいたるまでの瞬間的なスピードとフッキングパワーに優れている。まさに極的にアングラー側が仕掛けていくためのモデルとして必要な要素に的を絞り込んだ『掛けにいく』ためのシーバスロッドとして開発が進んだのであった。
 
 
 
 
1.ファーストテーパーの利点
ハイプレッシャーを打破するファーストテーパー 
 
A:ルアーの操作性
近年、急激に人気の高まったディゲーム。沖堤やボート以外でも河口域のシャローやテトラ帯など、そのステージを広げつつある。ミノーやシンキングペンシルでゆっくりとしたゲームが主体のナイトゲームとは対照的にバイブレーションの早巻きや、ブレード系のボトムトレース、ジグのスライドアクションなど非常に多彩なルアーセレクトにともないさまざまなロッドアクションが要求される。また、最盛期のイナッコへのボイルに有効なトップウォータープラグのドッグウォークなど小刻みなティップシェイクでも使いやすい。このように早く複雑なゲーム展開において求められるのがファーストテーパーモデルの操作性の高さなのである。
 
B:キャストコントロール
週末に混み合うポイントで、ロッドを振る・・・どうしてもプレッシャーとの戦いになる。当然、先行者が打ち損じた橋脚や沈みテトラなどの誰もが躊躇しそうなポイントも狙っていかねば魚からの反応は薄い。向かい風だろうが逆流だろうが、左右されずに安定してピンポイントを打ち抜く・・・そんな正確性も備わっています。ブランクスのメインマテリアルは40tクラスの高弾性カーボンを使用。ブレの少ないシャープな振り抜け感がキャスト性能を向上、向かい風のなかでも早いヘッドスピードを維持してルアーの飛行姿勢を安定させる。これにより、少ない力でルアーを確実にかつ正確に遠方にプレゼンテーションすることが可能になるのだ。
  
C:フッキング能力
そんなきわどいシチュエーションやバイブレーションの早巻き等でようやく捉えた貴重なバイト。モタモタしていたら首振り一発でサヨウナラ・・・となる前に瞬時にフッキングさせたい。アングラー側のフッキングパワーをロスすることなく、魚の筋張った口まわりさえ貫通させるハードベリーが必要となってくるのだ。また、無理な体勢で不意に出たバイトも手と腕の動きだけで確実にフックアップさせる。360度あらゆる角度に追随する。
 
また、遠征時に使用する大きくて太めのフックやシングルフック等でフックアップする際にも臆することなくブチ掛けにいくことで夢のランカーサイズとも対等に渡り合える。
 
 
 
  
2.ケブラー素材によるパワーブランク
 太いトルクを発生させるケブラー素材
 
実際にランカーサイズがヒットした瞬間になすがままに引きずりまわされ、ストラクチャーでラインブレイク・・・という悔しい経験は一度でも味わうと必然的にタックルはゴツくなる。しかし軽快な操作性を失わずに先手をとるためのパワーを手に入れる・・・それを実現させるのがケブラー素材となる。この強靭無比な素材を組み込むことで、限界までバットを絞り込まれた緊急時に、独特の粘り強さでトルクを発生。車で言うところのターボのようなオーバーパワーでランカーの強烈なファイトを瞬時にねじ伏せる。イメージとしてはMHクラスのブランクにMLクラスのライトなティップが装着されたというところだろうか。
このオーバーパワースペックにより、サーフや外洋周りでシーバス以外のパワーファイターに遭遇した場合にも十分渡り合えるのだ。
 
 
 
 
3.ステアリンググリップ
A:オリジナルカーボン調リールシート(DPS18)
 
高級感と兵器のような無機質なテイストを持つカーボン調パターンをDPS18にプリント。ステラやブランジーノのような高級機種との相性もバッチリ。所有欲を満たすギアとしての存在感をかもし出します。
 
 
 
B:ハンドホールドグリップ
 
リールシートの下に位置する独特のクビレ。これは高速リトリーブや激しいジャーク時にリールシート全体を手の掌で包み込むことで、握力の低下を極力防ぐための形状となっている。また、剛性の高いブランクパワーを活かして瞬時にフッキングする際にも手首が負けずにフッキングを決めることが可能です。
 
 
C:リストサポートエッジ
 
その下に今度はそろばんのコマのように張り出した部分が手のひらとヒジのほかに手首でロッドを支持。緊迫のファイトにおける急激なロッドワークの際にも手首、腕、ヒジと多点式でロッドをサポート。まさに“腕とロッドの一体化”を具現化した新システムを採用。またウェーディング時にベストのフロントストラップに差し込んだ際に、リールが水没しない位置でとまるストッパーの役割も果たします。
 
 
D:アームシェイプカーブ
 
人間の腕の曲線に極力あわせたゆるやかなカーブ。これが腕への密着度を飛躍的に高め、激しいアクションでもロッドがズレることなく、腕の力を100%ブランクに伝えます。また、ヒジにあてることなく、腕の横に密着することでもロッドをホールドできるので、音速リトリーブなど早いアクション+負荷のかかるスタイルでも非常に扱い易いのが特徴です。
 
 
E:ブラインドホールドグリップ
瞬時にホールドできるブラインドホールドグリップ
 
激しいロッドワークやファイトにともないショート化してきたリアグリップ。しかし、キャスト時にはしっかり引き手をホールド、力を込めてブランクを曲げないとコントロールが非常に付け難いのも事実。この引き手の重要性を活かすために指を掛けやすい有機的なエンドグリップデザインとなっています。暗闇でどこを握っても瞬時にしっかりホールド、ミスしたくないキャストシーンもきっちり決めることができるのです。